2025.05.13
新築戸建て「温度を感じる、かっこよさと柔らかさが両立した家づくり」

閑静な住宅街に洗練された外観がひときわ目を惹くK様邸。土地選びから建築家に相談することで、立地と空間のポテンシャルを最大限に引き出しています。出会いから完成にいたるまでK様の家づくりのお話を多岐にわたっておうかがいしました。
「山田悦子(以下、山田)」
「施主K様(以下、K様、ご主人、奥様)」
K様とエツコさんの出会いからお聞かせください。
ご主人 二人目の子がお腹にいた頃、マンションが手狭になってきたのでそろそろ戸建てがいいねって話していまして。子供達に残せるものがいいかなって。私自身、昔から建築物がとても好きで、もちろんハウスメーカーの住宅展示場も何箇所も見て回ったりしていたのですが、意外とハウスメーカーさんって規格があって自由にできないよって周りから聞いていたので、それだったら建築家にお願いしたいと考えました。インターネットでいろいろな建築家の事例写真を探していたらその中にひと際ものすごく惹かれる作品があって、それが山田さんの作品でした。見た瞬間に一目惚れしたんです。本当にすごく感動的でした。凛としていながらもすごく柔らかくて、女性的なんだけど同時にかっこいいっていう。サイトを妻に見せたら、妻の場合は私とはちょっと違うところにも注目していて、どうやら山田さんのポートレート写真にビビっときたみたいで。
奥様 かっこいいひとだなって感じました。女性だからというのとも違って、山田さんが醸し出している空気感がそのポートレートから伝わってきて「私、このひと好きかも」って直感しました。山田さんの作品からもそれが伝わってきて、自分の中にストンって来て。
ご主人 それから山田さんのことをいろいろ調べていたら「田園都市建築家の会(以下、「田都会」)」というのを見つけて、当時のマンションの近所だったのでフラっと寄ってみたんです。そしたらちょうどその日、山田さんが事務所にいらっしゃったので、その場ですぐに戸建ての相談をしました。内心は『なんてタイミングなんだ!!』ってハイテンションでしたよ(笑)
山田 そういうかんじだったんですね(笑)。ありがとうございます。田都会にいらしたので、てっきり建築家をいろいろ見てみたいってことなのかと思っていました。
田都会には14名も建築家がいますからね。その日がたまたまエツコさんだったってことは、そういう運命だったんですね。
ご主人 そうなんですよ!妻にはじめて写真を見せたその週末ですからね。
奥様 田都会の事務所にいろんな建築家の作品集が並んでいて圧倒されました。私は夫と違って建築は詳しくないですし、普段なら自分が納得いくまでとことん調べるタイプなんですけど、でもなぜか今回は山田さんひとすじでした。
ご主人 その時点で、前から気になっていた土地があったので山田さんに一緒に現地を見に行ってもらったりプランを考えてもらったのですが、銀行とのやりとりをしている最中にその土地が売れてしまって、その計画はなくなってしまいました。それから、上の子の受験とか二人目の出産もあって2年くらい間が空いてしまったんですが、いろいろ落ち着いたタイミングでまた気になる土地が売りに出されたので、改めて山田さんにご連絡をしました。
奥様 その時も、お願いするなら山田さんって二人とも決まってましたね。なんで他の建築家を探そうとしなかったんだろう?
ご主人 私はみてましたよ(笑)単純に建築が好きなので。でも、自分の家をお願いするっていう視点になると全然違うんですよ。
奥様 当時は今とは全然違うテイストが好きだったんです。ヨーロッパビンテージっていうのかな。当時住んでいたマンションの家具も縁に大きなビスが付いていたり。でも山田さんの作品をみたら、ただかっこいいだけでなくて、温度感とか穏やかさみたいなものが感じられて、しかもそのテイストと、これから子供を育てていくんだぞっていう新しい生活がぴったりリンクするイメージができたというか、全くそれまでに私の中にはなかった価値観だったのに、すごくしっくり来たんです。
お施主様インタビューはこういうお話が聞けて本当に幸せですよね。
山田 もう本当にありがとうございます。いま全身でお二人のお言葉を浴びて癒されています。
奥様 ポートレート写真をみた時の印象のまんまの方ですよね、山田さんって。物腰柔らかいけど、男前なところもあって。先ほどから女とか男とか今の時代的に合わない表現かもしれないですね、すみません、「芯がある」って言い換えられるかな?
山田 そうですね、私、かわいいお洋服とか着てないので。
奥様 いやいや、そういう話ではなくて(笑)
2年越しの家づくり再開となってから、まずはどんな流れがありましたか?
ご主人 まずは売りに出されたばかりの二つの土地を見ていただきました。山田さんに現地に同行していただいたら、即「こちらの土地がいいですね」とおっしゃっていただいて即決しました。
山田 選ばなかったほうの土地は、ここよりも価格は安く駅からも少し近いという利点はありましたが、擁壁の上にあったので、その擁壁を作り直したら結局、総額が高くなる可能性がありました。
プランはどのように進めていかれましたか?
山田 まずはご夫婦お二人に「住まいのアンケート」を書いていただきました。この家でどんな生活をしたいかっていうような内容ですね。そこから1ヶ月後くらいに最初のプランをご提案して、K様の方からスキップフロアがいいなとか、収納量を増やしたいなというリクエストをいただいてそのあとは何度もやりとりをしながらプランを修正していきました。
ご主人 一番最初はキッチンの裏が全部収納になっていて、その一部がドアで、奥に入ると秘密基地みたいになっているという案もありましたね。
奥様 家事動線についての「ああしたい、こうしたい」を汲み取っていただきながら進めていただきました。
外観も中も複雑な構造ですが、わずか2〜3回の修正で仕上がったのですか?
山田 そうだったと思います。あとは微調整で。
ご主人 山田さんが模型を作ってくれたので、複雑そうなスキップフロアも、難なくイメージすることができましたね。フロアごとに用途が違うから若干ここで段差があることによって気持ちが切り替わると言うか。階段に座ったりもできますし。
奥様 そうそう。本当はそれがしたくて。ホームパーティーとかやる時、椅子が足りないからって子供達がみんなで座れるのがいいなって。ご時世的に、全然パーティーやってないんですけど(笑)でも、そういうイメージが最初から私達の中から出てきたというわけではなくて、私達が言った内容を「なぜ、それが必要か」という気持ちの部分まで汲み取って具現化してくださったので、やりとりが少なくて済んだんだと思います。できる・できないじゃなくて、まずは推し量ってくださるというか。
山田 フロアごとの目的はすぐに決まっていきましたね。ただ、「パントリー」とか「ランドリールーム」って今でこそよく聞くようになりましたが、K様がプランを考えられていた頃はまだそこまで浸透していなかったような気がします。
ご主人 確かに当時はあまりランドリールームってなかったと思います。今ならベランダを作らずにランドリールーム作ってって言われていますよね。
奥様 その感じだと、あなた、まだ見てますね、建築雑誌。
一同 (笑)
山田 あと、私にとってすごく思い入れがあるのが、階段なんです。すごく大好きで。もともとスケルトン階段って案だったんですよね。でも奥様が蹴上げのところが空いているのが怖いっておっしゃっていて。蹴上げのところにパンチングメタルなどの案もいろいろやっていくうちに今のこのジグザグの階段と細いバーを立てることになって。とってもかっこいい階段になりましたよね。
奥様 圧迫感もなく。怖くもなく(笑)。隙間がなく色も黒なのに、まったく圧迫感がないんですよね。この空間のアクセントになっていますよね。
山田 こうやって、設計側からだけの案ではなく、お施主様からのご要望が組み重なった結果、思いもよらない素敵な空間になる過程がいいですね。「設計者もお施主様も一緒に住まい作りをしている!」という感じがしてとても嬉しいです。
柔らかさとかっこよさの「かっこよさ」の方を担ってますね。ステンレスのキッチンも、エツコさんにとってはちょっと珍しい印象ですが。
山田 そうですね。総ステンレスのキッチンというのは弊社はあまり扱わないんですが、キッチンメーカーのショールルームに同行させていただいて、その時にお二人がこれがかっこいいっておっしゃっていたのでスッと決まりましたね。その時に、このステンレスがお好きだったら、それに合わせて周りのトーンはこうしようかな、壁はこれで、床はこれで、ってどんどんピースが埋まっていきました。
奥様 このタイルもしっくりきてますね。やっぱり山田さんの判断は正しかったですね。山田さんのところでサンプル見せてもらって「これはどうですか?」と言っていただいたのが良かったですね。山田さんから何かをゴリ押しされるとかはなくて、逆に、私達の意見も否定されることもないので、不思議なことに、最終的には自分で選んだ気になっているんですよ(笑)山田さんはそういうのがお上手、というか、人の話を聞く能力が優れていらっしゃるのかな。テキパキ仕事されているけど、柔らかい印象っていうのはそういうところなのでしょうか。
山田 お二人とも「これが好き」というのをちゃんと伝えてくださるので、こちらも明確にビジョンが描けます。例えばこのダイニングテーブルもご自身で決められていて、そういうのもちゃんと教えていただくのでピースが埋まりやすいんです。
ご主人 私達が家具屋を見に行っていて。すごく気に入ったのがあるからと山田さんにも見てもらったりしてましたね。しかも、偶然にもその家具店が田都会の賛助会で、ちょっと安くしてもらえるかもってお願いもしてくださったりして。それもすごいタイミングでしたね!
ダイニングテーブル前にある間仕切りのようなものは何ですか?
山田 PSですね。ラジエータの中に水が流れていて部屋全体を温めたり冷やしたりできるものです
ご主人 もともと全館空調を考えていたんですよ。妻や子供達がエアコンの風が苦手っていうのがあったので、山田さんと設備担当の方に相談したらこういうのがあるよって教えていただいて、実際にショールーム見に行って体験したらこれがいいねって決まりました。
山田 これも田都会の賛助会のメンバーさんなんですよ。ラジエータって聞いたらなんとなくあったかくなるのはイメージできますけど冷房はどうなんだろう?ということで、実際に真夏の暑い時期にショールームにお邪魔したらもう体がキンキンに冷えるぐらい冷房効率がよくてびっくりしました。
これは設計の段階から計画が必要なものですか?
山田 そうですね。中にお水が通っているので、配管とか排水とか、最初から計画しないといけないものですね。それはそうと、K様のおうちってすごく静かですよね。エアコンがないから。冷蔵庫も奥にあるので家電製品の音がまったくしない。私達はエアコンの音ってもう当たり前になっちゃっていますが、ここまで静かだとは。音に敏感な方にもPSをおすすめしているんですが、PS、素晴らしいですね。
奥様 床暖を入れなくてもPSの輻射熱のおかげで床とかソファー周りもあったかいですよ。リビングの吹き抜けから上の廊下まであったかいのが続いています。
山田 夏になると結露しますよね。ここの結露水の受け皿とか気になりますか?
ご主人 いえいえ、除湿が自然とできて、カラっと涼しくなるので重宝していますよ。
いたるところに照明デザイナーの園部さんの技をを感じられますね。
山田 はい、もちろん今回も園部さんにお願いしました。
ご主人 園部さんにはこちらからこうしてああしてっていうのは全く言ってなくて、もう園部さんのセンスに任せっきりでした。なぜこれがこういう照明なのかとか、なぜここにスイッチを配置するのかとか、もう全部詳しく説明してくださるので、ずっと楽しかったです(笑)
山田 ダウンライトの種類も場所ごとに使い分けられていて、すごい細やかな職人芸ですよね。
奥様 そう、ライトの向きを調整してくださったり。わからないことがあったらすぐに駆けつけてきてくださいますし。園部さんのパッションが本当にすごくて、私も毎回、お話できて楽しかったです。
自由設計は選ばなくてはいけないものが多岐に渡るので大変という声をよく聞きますが、お二人の場合はいかがでしたか?
ご主人 大変だとは感じませんでした。山田さんは私達の生活が見えてるんですよね。このひとたちはどんな生活するのかな?っていうのを細かいところまでが見えている。私は建物は好きですけど、肝心の家の中は妻の意見で作りたいと思っていたので、その妻の要望を言葉から以上に読み取ってくれているんです。希望だけじゃなくて、使いにくいところはちゃんと使いにくいですよって教えてくださったりして。
奥様 確かに。だから打ち合わせが常に心地よかった。山田さんの事務所で打ち合わせをした帰りに夫と二人で話してても一度も辛いとかストレスって話は出なかったですね。きっとそれは、山田さんのご提案の仕方がお上手なんだと思います。ちゃんとこちらの好きなテイストを汲んでくださってパーツを取り寄せてくださるので、私達はそのパーツの実物を見に行こうって足を運ぶことはするんですけど、実際には山田さんに導いてもらってるんですよね。だから、家づくりの楽しいところだけを味わわせてもらってるかんじでしたよね。あと、子供たちもこの家を好きって言ってくれてて。家を建てて本当によかったって思ってます。この空間だからのびのびしていられるし、空気感を感じてくれているといいますか。普段は家族みんな時間がバラバラで一緒にいられる時間があまりないかもしれないですけど、前より距離が近いというか、ちょうどいい距離感があるのはこの空間のおかげじゃないかなって改めて思います。
編集部(江尻・オガワ)