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2026.01.06

リノベーション「職人たちをも魅了する調和のとれた空間演出」

RC造の築60年のご自宅を大胆にリフォームされたK様。美しい日本庭園と一体となった空間が印象的ですが、リフォーム前は客間からしか庭を見ることができなかったといいます。変貌を遂げたリフォームの全容についてお話をうかがいました。
「山田悦子(以下、山田)」
「施主K様(以下、K様、ご主人、奥様)」

 

K様がお知り合いだった工務店のご紹介とお伺いしましたが、当初の経緯をお聞かせください。

 

ご主人 私には気心が知れた工務店がいまして。その工務店のOさんに、自宅のリフォームを考えているんだけど、と相談したら「建築家を入れたらどうですか?」と提案されましてね。そこで山田さんを含めた3名の建築家をご紹介いただきました。工務店の社長からは「建築家の中には突飛な方もいるけど、今回の3名は部材のこともよく理解しているし、使い勝手やメンテナンスまで含めてきとんと考えている建築家だよ」と、強く勧めてもらいました。

 

奥様 実際にお会いする前にそれぞれの作品事例を拝見したのですが、その段階で山田さんのテイストが一番好みねって夫婦で話していました。それから実際に会ってみてどの方もお話は魅力的だったのですが、最終的には山田さんのホテルライクな雰囲気がいい、となりまして。

 

そのご紹介いただいた工務店がK様邸の施工を担当されたのですか?

 

山田 いいえ、ご主人がお仕事でよく利用されている別の工務店さんで、アトリエエツコがご一緒するのははじめてでした。その工務店さんは自社で設計もされているので、普段使われている材料やディテールがアトリエエツコと違うため、私が普段扱っている部材や仕上げ方法について「これで大丈夫なのかな?」と都度確認いただきながら進めました。熱心に打ち合わせをしてくださったり、何度も図面のやりとりに応じてくださいました。

 

ご主人 施工された工務店のSさんは、家が完成した際、家中あちこち写真を撮って工務店のポートフォリオに使っていますよ。山田さんに相当刺激を受けたんじゃないかと思います。今も別件でデザインが自分たちでは手に負えないから、また山田さんに頼みたいって言ってましたよね。

 

山田 はい、その後も引き続きご紹介いただいて、ありがたいことです。K様邸の設計に参加してもらった照明デザイナーの園部さんの間接照明とシステムにもすごい感動されていましたね。

 

ダイニングからのお庭の眺めが最高ですね

 

ご主人 そうなんです。山田さんがダイニングの壁をドーンと開けてくれたから、家全体がすごく明るくなりましたよね。山田さんがはじめてうちに来てくれた時に「食事の時にダイニングから庭が見えないのはもったいない」って言ってくれてね、もう、その一瞬で心を掴まれました。

 

奥様 まさか、ダイニングから庭を見るなんて不可能だと思っていたので、山田さんから「できますよ」って言われた時は本当にびっくりしました。

 


 

ご主人 私の父も生前にこの家のリフォームを計画したことがあって、ただし、リビングとダイニングを隔てる壁も階段も動かせないというので、その当時の計画図面にも残されたままでした。もともとこのリビングは客間で、庭もお客様のためのもの。家の者は陽の入らない北側の暗い部屋を居間にして過ごす、という生活は私が子供の頃の農家では当たり前でしたが、今では時代も家族構成も変わって、キッチンやダイニングがあまりにも暗いからどうにかしたいって考えるようになりまして。キッチンを明るい方まで大移動させるのかな?と想定していたものですから、山田さんからの壁をとりのぞいて開放するという提案には本当に驚きました。

 

山田 私の実家も農家で、今でも誰も使わない客間は陽当たりのいい場所にあり、家族がいるリビングは北側の暗い場所にありますね。

 

ご主人 家の中の一番いい部屋はあくまで応接間であって。普段は使わない、と。

 

それはもったいないですね!

 

山田 はい。でも、ホテルライクな広々とした空間がお好きそうでしたし、1階で過ごすことが多いということでしたので、細かく部屋を分ける必要がないなと思ったんですよね。真ん中の壁を抜いて廊下という概念を無くしたので、光や風の通りも、ひとの動線も、大きく変わりましたね。

 

ご主人 キッチンの幅も数センチ単位で調整していただいたんですよ。この大きなダイニングテーブルを入れると残りの隙間は何センチになるかって具体的な数値を入れ込んで、何度も図面を引き直してくださったんですよね。それが決まらないと工事が入れないからって。

 

奥様 そうそう、山田さんが「これくらいあれば大丈夫ですか?」って何度も聞いてくださって。いままであった家事的な不満、やりづらいっていうのは全部解決していただきました。

 

ご主人 ただね、いざリビングとダイニングの間を開放するとなると、エアコンの効きが悪くなるんじゃないかって心配で。それまで一部屋ずつエアコンがついてて各部屋毎に温めたり冷やすのが普通だったから。でも、最終的には山田さんが「断熱改修でサッシを全て更新し、外壁面の断熱材を強化するので大丈夫です」っていうなら納得するしかないですよね(笑)

 

 

エツコさんなら信頼できる、というきっかけはあったのでしょうか?

 

ご主人 はじめから盲目的に信じてたというわけではなくて、山田さんが本当にすごいなと感心したのは、それこそ節々にはあるんですが、例えば断熱材の件ですかね。

 

山田 はい。断熱材は、袋状のグラスウールを軽鉄の柱の間にただポンポンって設置するだけでは、軽鉄の柱が結露したり、そこから冷気が入ってきてしまいます。そこで、気密をしっかり保てる吹きつけの断熱材をおすすめしました。

 

ご主人 当時は海外でロックダウンがあって部材の輸入が遅れていたというのもあって、工務店さんからグラスウールにしますか、と話しがあったのですが、山田さんが時間がかかってもいいから吹きつけにしましょうと。そういう一連のやりとりをみて、『山田さんにお任せして大丈夫なんだな』ってだんだんと実感してきました。

 

奥様 おかげで今のあたたかい部屋があるわけですから、本当にありがたいですよね。

 

ご主人 私達が言ったことを汲んでくれるのはもちろんですが、山田さんはそれを叶えるための努力をしてくださるんです。有るもので済ませようとか、工務店や自分の得意の範疇で済ませようっていうやり方ではなくて、まず私達施主にとってそれが本当に最善なのかということを常に考えてくれました。

 

一番フラットな立場で対応してくれる、ということですね。

 

ご主人 そうそう。誰への忖度もなくフラットに考えてくれていました。

 

山田 はい。だから、怒涛の打ち合わせの連続でしたよね。でも繰り返し綿密に打ち合わせいただけるので、だんだんと私も感性が「K様化」していくんですよ(笑)。きっとこうされたいんだろうな、こういうテイストがお好きだろうな、って感覚的なことも打ち合わせを重ねるたびに深まっていきました。

 

ご主人 そうね、山田さん自身がどんどん施主に同化していくかんじ(笑)。全部で何回くらいうちに来てもらっていましたかね...多すぎて分からなくなってしまったけど。

 

山田 記録を見ると16回くらい履歴がありますが、実際はもっとお会いしていたと思います。お仕事のお忙しいスケジュールの合間をぬって、それこそ、ご主人は農作業の長靴を履かれたままお打ち合わせとかもありましたよね。

 

広い玄関には打ち合わせスペースが設けられているのですね。

 

ご主人 昔から人の出入りが多いので、表玄関には打ち合わせができるように応接セットを配置しました。

 

山田 玄関壁のコーナーの木の仕上げ方に関しても工務店さんと色々と意見のやりとりをしましたね。職人さんはコーナー部分には見切り材が必要だって言って、私達はすっきりとした見た目をご提案したくて、見切り材を使用しない方法をご提案していて……。その時もK様がアトリエエツコの方法でやってみよう……!とご決断していただきまして……。

 

ご主人 でも山田さんの言う通りに出来上がったら、みなさん惚れ惚れとしていましたよ(笑)

 

 

山田 打ち合わせを重ねていくと、K様は図面の見方も的確ですし、ご自身の考えに固執することなくリビングの開放もすんなり受け入れてくださったり部材を決めていただく際も迷わず上質な方を選ばれていたりと、本当に目利きでいらっしゃるんだなって思いました。

 

ご主人 山田さんは、こちらが全部を言わなくても私達の好みや意図を理解してくださっているので、提案してくださる選択肢に間違いがないんですよ。だから信頼できる。今までもそうやってお仕事されてるからお客様につながっているんだろうし、私もまた誰かに山田さんを紹介したいって素直に思いますよ。山田さんを紹介してくださった工務店のOさんも会うたびに「紹介して良かった」って(笑)

 

山田 最終的にK様が納得されるだろうという方を必ず選択するようにしています。それに対してメリットとデメリットはちゃんとお伝えして。お二人とも最後まで辛抱強くお付き合いいただきました。

 

ご主人 作ってる最中が一番楽しかったよね

 

奥様 山田さんと打ち合わせするのが毎回とっても楽しくて、家が出来上がった時に「え!もうあの打ち合わせができなくなっちゃうの?」ってちょっと切なくなりました。

 

山田 何よりのお言葉です。ありがとうございます。

 

 

好みのテイストに合わせるというのは具体的に何か資料があるのでしょうか?

 

奥様 自分がどうしたいのかっていうのがぼんやりとしかわからないというか、自分の好きなテイストを言語化するのがすごく難しかったので、初めのうちはどう伝えればいいか身構えてはいましたけど、山田さんから「気に入った写真があればどんどん送ってください」とおっしゃっていただけて、インテリアの雑誌をたくさん見て、たくさんメールしました。今思えば支離滅裂だったかもしれませんが、大量に送った写真の中から核となる部分を山田さんが掬い取って私達の好みを引き出してくれましたね。そのうちだんだんと私自身が「これです」ってハッキリと分かってきました。

 

山田 例えば、ダークめのラグジュアリーな木ですね、選択肢として明るい色もお見せするのですが、最終的には暗い感じを選ばれていました。

 

奥様 いまでも家具とか置きものとか自分たちだけで決断するのは心配だから、山田さんに連絡して相談していて...もう家は完成したのにずっと山田さんがいてくれてる感じです。

 

ご主人 自分が好きな色って言っても必ずしもこの空間とマッチするとは限らないんですよね。例えば、私は赤とか青も好きだけど、ここにそういった色を持ってくると調和がとれないって山田さんにやんわり指摘されて、なるほどって納得できてしまう。これが「調和」なんだなーって理解できるんです。

 

山田 私達だけの提案だけではどうしてもシンプルになりがちなんですが、K様に途中経過をチェックしていだたくと「このあたりが寂しような気がする」と率直に言っていただけるので、じゃあ風合いの違うクロス(壁紙)を貼ってみましょうか、と布クロスの見本をたくさんお持ちして、そこでまた次の段階に進めるんですね。

 

ご主人 山田さんが持ってくる色見本がまた素敵でね。普通は白とか木目とか無難なものを貼ればいいって思うんですけど、山田さんのセレクトはここでもひと味違うんですよ。

 

山田 フローリングやカウンター収納に木を使っているので、更にその他を木にしてしまうとやりすぎてしまうから、和室は布クロスでふんわりさせていますね。逆に、K様からご指摘いただいて良かったところもありました。納戸のリビング側の巾木が当初はその他の巾木と同じ白色のままになっていて、K様がクロスの色にあわせた浅いグレー色の巾木に変えてくださったんですよね。

 

 

ご主人 私の場合、マンション建設などを以前からやっていましたので、工務店がカタログを持ってきて値段をみながら選ぶという経験はありましたが、その時とは全く違いました。自分達だけでは考えつかない自分達にあった選択肢を提案してくれる。これこそが、建築家に入っていただく利点ですよ、建築家に設計料をお支払いする価値です。工務店にとって扱いやすい部材で予算を抑えながら確実に作り上げることも大事なことですが、一方で、山田さんの場合はまず最初に施主である私達の生活を前提に、私達に合うものを無数にある選択肢の中から選んできてくれる訳です。でも、本当のことをいうと、はじめはね、全然わからなかったんですよ。工務店にお願いするのとは別に建築家を呼ぶってどういうことなんだ?何が違うんだ?って。

 

山田 わかりづらいですよね。
 

ご主人 でもね、家を作ってみて理解できました。山田さんが入ると、全然違う!(笑)

 

奥様 私も、山田さんだからこの家ができたって心からそう思いますよ。

 

ご主人 この階段にしてもね、やっぱり山田さんの経験則というか。工務店はこんなに細くて薄い鉄で階段を作って大丈夫なのか?って言っていたんですよ。でも、山田さんのおかげで階段周りの視界が良くなって気持ちがいいでしょう!あれだけ存在感があった階段が軽やかに、しかもかっこよくなりました。

 

山田 階段は、Sさん(工務店)の仕上げが見事でした。足が滑らないように、普通は足が掛かる位置に溝を掘るのですが、逆に木を貼って仕上げていて、それが本当に美しくて、しかも滑りにくい!素晴らしいと思います。

 

 

新しいお家で生活は変わりましたか?

 

ご主人 大きく変わりましたよ。まず、動線がよくできているから。あとはさきほど話に出ていた断熱のおかげで本当に住み心地がよくなりました。

 

山田 築何年になるのでしたっけ?

 

ご主人 もう60年近いですね。

 

山田 RCで作られていて良かったですよね。お父様の先見の明がおありだったのだと思います。躯体がしっかりしているので開口を開け直したりもできましたし、そういうのはずっとお付き合いのある工務店ならではの対応力ですよね。今回の工事でちゃんと耐震補強もしていただきました。

 

奥様 収納も、合理的にものの配置を決めたから、片付けがしやすくなりました。

 

山田 K様ご自身が、どこに何を仕舞うのかと細かいところまでお打ち合わせ時に描かれていたので、住み心地や片付けやすさに繋がっているのだと思います。

 

細部に宿りますね。

 

ご主人 工事が全部終わってから最後に警備システムが来るんですけど、それも最後までせめぎ合いがありましたね。警備センサーをどこに配置するのか、しかるべき場所であり、でも目立たない場所を吟味しましたね。

 

山田 そうですね、ひとつひとつのセンサーの位置も目立ちにくく、且つ、作動する所に設置するように指示していたので、警備システム会社の方には、私めんどくさがられているなと感じていました(笑)

 

ご主人 でも、ひとつひとつを妥協しないところが山田さんだから。それでこのホテルライクな凛とした空間が作り出される訳ですよね。

 

山田 K様の感性が私に憑依しているので(笑)

 

ご主人 そうそう、こうしないと私が納得しないってことをわかってらっしゃる(笑)お陰ですっきりとした空間になってより庭が映える住まいになったと思います!

 

 
 

編集部(江尻・オガワ)

 
 

works > 日本庭園に開かれる住まい

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